日下部先生夏休み放浪記

平成27年9月、夏期休暇一週間を利用してアメリカ、カリフォルニア大学サンディエゴ校とサンフランシスコ校を見学させていただきました。 見学に際しては、東京医科大学整形外科の遠藤先生のお口添えをもちまして、名古屋市立大学整形外科の水谷先生に大変お世話になりました。厚く御礼申し上げます。
カルフォルニア大学は10大学からなるアメリカ最大規模の州立大学群であり、その中のサンディエゴ校とサンフランシスコ校を見学させていただきました。いずれも全米トップレベルの州立大学であり、多数のノーベル賞受賞者を輩出しています。最近では2012年にノーベル生理学・医学賞を受賞された山中伸弥先生もサンフランシスコ校の研究所にいらっしゃいます。
まずサンディエゴに向かいました。サンディエゴはメキシコとの国境に位置する街で、一年を通じて温暖な気候であり、美しいビーチも有名です。私が到着した日はその夏の最も暑い日であったようで、日差しが強かったですが、海沿いのとても気持ちの良い街でした。  サンディエゴ校では整形外科分野のSkeletal Translational ResearchでProfessorをしています舛田先生のラボを見学させていただきました。整形外科のラボだけでも巨大な施設を有しており、規模の大きさに驚きました。研究員の先生に案内していただき、設備見学やネズミの後根神経節を用いての研究の一部を見せていただきました。整形外科では『痛み』という主観的で定量化の難しいものを扱いますが、それをいかに行うか、実験のために用いられる設備の仕組みなど興味深かったです。まだ基礎研究を行っていない未熟な私にも分かるよう、丁寧に基礎研究やアメリカでの研究についてお話してくださり、どのお話も新鮮でした。研究を世界標準でやり、英語で論文を書いていくことの大切さを感じました。  サンディエゴからサンフランシスコに向かうと、サンディエゴとは打って変わって少し肌寒かったです。年間を通じて過ごしやすい気候なようですが、「霧の街」と呼ばれるだけあって、初日を除いて朝は霧がかかっていました。  サンフランシスコ校では、まずBrain and Spinal Injury Centerに行き、Neurological surgeryで脊髄損傷や脊柱管狭窄症などの研究をやっている森岡先生のラボを見学させていただきました。サンディエゴ校と同様にサンフランスコ校でも基礎研究はさかんに行われていました。サンフランシスコ校の概要から研究内容まで多岐に渡り、お話を聞くことが出来ました。アメリカでの研究はビジネスを無視して行うことをできず、研究費を得るために結果を出していかなければならない難しさを知りました。

次にOrthopaedic Trauma InstituteでAssociate Clinical Professorとして働かれている長尾先生を訪ねました。実際のERの様子や手術室などを見学させていただきました。24時間体制でサンフランスコ中から救急車の集まってくる施設ということもあり、見学中も多くの救急車や患者様が来院していました。比較的治安の良い都市ではありますが、病院内に警察官が常駐しているのが印象的でした。銃社会であるため、銃創なども多いそうです。外来診察室ではプライバシー保護のため診察室は個室となっており、また診察効率を上げるため、患者さんが先に診察室で待っており、そこに医師が診察に行くという形式でした。実際の臨床の現場で臨場感をもって見学させていただくことが出来ました。  最後にDepartment of Orthopaedic Surgeryに臨床留学されている水谷先生に案内していただきました。アメリカでは変形矯正を含めた脊椎手術を整形外科医と脳外科医が行っており、水谷先生はNeurospineのチームにいらっしゃいました。勉強会やカンファレンスに出席し、勉強会はMIS(Minimally Invasive Surgery)について、カンファレンスでは手術予定患者についての議論を行っていました。スライドを用いた勉強会の内容は何とか理解出来ましたが、カンファレンス中の議論の内容は早くて聞き取れず、英語力向上の必要性を痛感しました。またレジデントやフェローが積極的に発言していたのが印象的でした。  今回の見学では自分が予想していた以上に多くの刺激を得ることが出来ました。百聞は一見に如かず。疾病構造の違いはありますが、医学は世界共通である一方、医療は文化だと改めて認識しました。オバマケアでアメリカの医療保険制度も変化していますが、当然日本の国民皆保険制度とは大きく違います。 病院においては患者さんの入院期間は圧倒的に短いですし、医師と看護師以外にも多くの職種があり仕事の分担が細かくされています。手術法の選択に至るまで、節々に合理性や効率を追求している文化を感じました。日本でも最近では行われるようになっているそうですが、cadaverも盛んに行われています。カリフォルニア校のレジデントやフェローは熾烈な競争を勝ち抜いて、整形外科医になっており、対外的なアピールや積極性は日本人とは別次元のようです。文化の違いに優劣はなく、むしろ日本人や日本の医療の良さも感じることも出来ましたが、良いと思う部分は取り入れていきたいと思いました。
もともと海外の医療現場を見たいという思いがあり、今回の機会を得ることとなりました。夏期休暇ということもあり、見学の合間では観光もしましたが、それも現地の先生に案内していただき楽しく過ごすことが出来ました。一週間という短い期間ではありますが本当に多くの刺激を得ることが出来ました。得た刺激をもとに、まずは日本で精進しようと思います。このような見学の機会や色々なお力添えを賜りました諸先生方には改めて感謝申し上げます。本当にありがとうございました。

日下部 拓哉先生

ロックフェラー大学に留学して

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留学

約4年前、2009年1月から7か月間、米国ペンシルバニア州フィラデルフィアにあるThomas Jefferson University、Spine surgery、research部門でVaccaro教授の下、研究留学をさせていただいたことについて書かせていただきます。

与えられたテーマは、一つは第1頚椎(環椎)単独骨折に対するmanagementについての文献的考察、もう一つは腹臥位MRIにおける大血管と腰椎の位置関係に関する研究でした。環椎単独骨折は比較的少ない骨折ですが、その治療法については保存加療、手術加療含め未だ議論があります。そこで環椎単独骨折の文献レビューを行い、特に不安定型骨折の治療法による成績について考察を行いました。

一方、腹臥位での腰椎後方手術は脊椎外科において最もポピュラーな手術ですが、腰椎とその腹側にある大血管との解剖的位置を熟知しないと致命的な合併症を起こす恐れがあります。腰椎検査に用いられるMRIは大血管についても情報が得られ、非侵襲性の有用な検査ですが、通常仰臥位で施行されます。そこで我々は仰臥位と腹臥位MRIにおける腰椎と大血管の位置関係を比較し、その差異について検討を行いました。この研究はその後引き継がれ、2012年JBJSに掲載されました。(J Bone Joint Surg Am. 2012;94:1088-94 )

比較的短期ではありましたが、初の海外生活でもあり、大変有意義でありました。
留学に際してご尽力いただきました山本教授をはじめ諸先生方に改めましてお礼を申し上げます。

鈴木 秀和 先生(平成5年卒)