内科にとってせきや発熱、下痢がなじみがあるように、整形外科では、痛みはもっともなじみなある症状です。しかし、痛みは咳とか下痢とは異なり目で見ることがでず、研究をするにも動物に痛みを聞くわけにもいかず医学の研究の中でも遅れがちな分野であると言えます。近年の研究で、痛みは二つの経路から脳に伝達されることがわかりました。触る、熱いなどの感覚を伝える経路と、痛みが他の感覚と異なってこれはほっておいてはいけないと思わせるための情動として伝える経路があることです。そのため、痛みを分析するためには、痛み=知覚+情動として解析し、知覚の部分に効力のある治療と情動に対して効力のある治療を分けて考えて病期によって使い分けすることが重要であることが理解されてきています。
6月28,29日、これらの研究を行っている整形外科医師が中心となって集まっている「痛みを語る会」に出席してきました。牛田教授のリーダーシップのもと、今年で12回を迎えました。運動器の病態と痛みの関係を中心として、心理、バイオメカ、画像、病理、分子化学などさまざまなアプローチから研究を行っています。この10年は、痛みに対する理解がとても進みました。以前の治療は、NSAIDsと抗生物質、理学療法、手術が中心となり、治療に抵抗する痛みを精神的なもととして扱っていましたが、痛みを多面的に捉えて、炎症を伴った疼痛以外の疼痛に対しても次の選択肢を持つ治療へ変わりました。整形外科疾患の病態理解が、炎症、神経圧迫、OA、変形から心理、神経生理、分子レベルにまで移行したためです。今後、時代が変わっても、痛みは親身に語られなければなりません。いろいろな感性と考えを持った人が集まって、様々なアプローチで痛みに対処できるようになればよいなと思いました。

第12回 整形外科痛みを語る会 詳細はこちら