この度,令和2年度の学術奨励賞を受賞させていただくことになりました.
私が現在,澤地先生,正岡先生のご指導のもとで大学院の研究テーマとしてやらせていただいております,骨折治療に対する電磁場刺激に関する研究内容について,以下,概要を記載させていただきます.
1953年,保田岩男先生による骨に力学的負荷を加えると電圧が発生し,電流を加えると電気的仮骨が生じるという発見以来,様々な物理刺激療法が世界中で開発されています.当初は侵襲的な方法であったものが,より侵襲が少ない方法へと次第に改良を重ねられ,中でもパルス電磁場刺激法(PEMPs)・低出力超音波パルス法(LIPUS)は,侵襲が無く広く骨折治療に臨床応用されてきました.
両者を比較した際に,PEMFは1日の刺激時間が長時間必要とされていることより,現在我が国ではLIPUSの方が遷延癒合や偽関節治療の補助装置として頻用されています.しかし,我々はPEMPがより広範囲及び深部に到達する利点を生かし,刺激時間を短縮することで,効率的な利用ができないものかを検討しております.
これまで前骨芽細胞細胞様細胞株にする実験で,骨形成の細胞内シグナル伝達タンパク質の一つとして知られるmTOR経路が,持続的な電磁場刺激では一過性に活性化されるのに対し,間欠的刺激では継続的に活性化され,細胞増殖が促進することを見出しました.現在,軟骨芽細胞に対する実験でも,同様に間欠的刺激がより有効に働く可能性が示されつつあり,これまで臨床上必要とされてきた刺激時間より短時間でも有効な骨癒合促進効果が得られる可能性が示唆されております.
この賞をいただくにあたり,研究の機会およびご指導をいただきました山本教授,ならびにご協力をいただきました整形外科学分野の先生方に深く感謝申し上げます.これを機にさらに精進していく所存です. 岩城 敬博